適塾記念センターでの資料保存

2022年2月15日

適塾記念センターでは、緒方洪庵や適塾関係の多くの資料を保管しています。貴重な資料ですので、劣化しないよう適切な保管が求められます。今回は、当センターでの資料保存に関する取り組みをご紹介します。

当センターでは、資料は高機能収蔵庫で保管しています。収蔵庫の出入口は厳重に施錠され、温度・湿度が一定に管理され、資料の劣化を防いでいます。

しかし、単にこの特別収蔵庫に資料を入れておけばそれでよいわけではありません。資料に大敵な害虫等の対策を施してからでないと、害虫を収蔵庫に持ち込むことになってしまいます。

そこで、資料を殺虫・殺菌処置することが必須となります。

これまで、特別な薬剤を用いた燻蒸を行う計画が立てられていましたが、費用が嵩むことが問題でした。また薬剤の人体や資料への影響も完全にないとは言い切れません。そこで、さまざまな殺虫・殺菌処理を検討し、今年度から脱酸素剤を用いて殺虫することにしました。 

この方法は、酸素不透過性の材質で作られた専用のガスバリア袋に、殺虫対象となる資料と脱酸素剤を入れて一定期間密封して酸欠状態を作り、害虫を窒息させるものです。

この方法は、人体に安全、資料を損なわない、殺虫効果が高い、容易に実施可能であること、さらに、対象資料の多寡に応じて必要な脱酸素材とガスバリア袋をその都度用意すれば実施できるというメリットもあります。何より、一度に多くの費用がかからないため、経済的でもあります。 

では、その方法を具体的に説明します。

脱酸素剤として用いるのは、三菱ガス化学(株)のRPシステムが広く用いられており、これを用います。 IMG_2204.JPG

. 専用のガスバリア性の袋に、対象資料と脱酸素剤RP(Kタイプ)を必要量入れる。*若干多めに入れて確実に脱酸素殺虫できるようにします。

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. 脱酸素の確認のため、酸素の有無で色の変わる酸素インジケーターを入れる。有酸素では青色(左下)ですが、脱酸素状態になるとピンク色(右下)に変化します。

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. シーラーで密封をする。確実に密封します。

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.酸素インジケーターで脱酸素状態であることを確認し、5週間程度その状態を維持する。シバンムシの卵などは脱酸素状態に強く、これを死滅させるためにはやはり十分な期間が必要です。 

実際にやってみると、意外と手間がかかります(複数人で行うのが効率的です)。燻蒸だと一定の空間を一気に処理できるため、効率性は確かに劣るものの、低予算で実施可能かつ殺虫効果が高い資料保存の方法です。いまのところ順調に作業が進んでいます。